こんにちは!シロックマ(@shirokkuma_pa)です!
渡米して以来、病院に受診をすることがなかった私が、妊娠10週目での流産を経験し、アメリカの救急外来に初めて受診し、アメリカの医療を受けることになりました。日米の医療システム・保険の違いなどについて、ご紹介します。
流産時の私の状況
妊娠10週目で、初診は11週目(アメリカは初診が10週目以降)の予定でした。つわり、眠気、倦怠感などはあり、特にそれまでは出血はありませんでした。
※初診が10週目以降であるのは、流産がそこまでに起きる可能性が高いためだそうです。
続く出血
10週目に入ってから、3日位出血(bleeding)がありました。
最初は少量で、茶色っぽかったのが、徐々に赤褐色になってきて、量も少し増えました。
量は、パッド(アメリカではナプキンをPadと呼ぶらしい)を1日1回、替えるくらいなので、安静にして様子をみていました。
初めての妊娠で、周りに同じ状況の人もいなかったので、不安な情報を検索する日々で、1日がすごく長く感じました。
11週目で初診の予定だったので、そこまで大丈夫か、緊急で受診をするべきか迷いました。
日本の産婦人科の友人に相談
出血は量が増えていなければ、基本は安静に過ごしてよくて、ただ、初診がまだで胎嚢が確認できていないため、異所性妊娠の可能性が否定できず、腹痛があったら、受診した方がいいと言われました。
妊娠初期(4-5週あたり)の出血は起きることがあると知りながらも、10週目での出血は、絨毛膜下出血の可能性があることも知りました。
安静ってどの程度?
そもそも安静とは、どのレベルまでいいものなのか、家事はどこまでしていいのか、シャワーはいいのかなども、わかりませんでした。
ただ、何となく座っている姿勢でも出血が増える気がしたので、ベッド上で過ごしていました。
妊娠中の身体の変化(つわり、眠気、倦怠感など)もありながら、精神面でも、出血からくる不安がありました。
腹部の違和感
土曜の夜中に、腹痛まではいかないけど、生理の重い時の感じがあり、何とも思わなかったズボンの締め付けが苦しかったり、同じ姿勢でいるのも苦しい感じがありました。
これは、消化器系からくるのか、婦人科系からくるのか、自分でもわからず、急性ではないけど、じわじわと数時間の間、続きました。このまま様子を見ていいのか、不安になりました。
受診をするかの判断
何となく、緊急でも受診した方がいい予感がありました。
床に座り込んで、立ち上がった時に、何かが出てきた感じがあり、出血の他に、白っぽい膜に包まれたもの(それがSac(胎嚢)と呼ばれるものだったのか?)が出てきました。
出た時は、これはきっと流れたんだなと思い、出血が止まらず(生理位の量ではあるけど)、ただ、腹部の苦しさからは解放されました。
夜中でもあり、受診するべきか迷いましたが、アメリカの友人に相談し、近所の総合病院を紹介してもらい、初めての救急外来を受診することにしました。
保険の確認
保険は、HMO、PPO、POS の3種類あります。
HMO
- 自由度は低いが、保険料が安い
- ネットワーク内(in-network)のかかりつけ医を持つ
- 専門医の紹介が必要な場合は、かかりつけ医の紹介が必要
- 緊急時以外は、ネットワーク外の医療機関の治療はカバーしない
PPO
- 自由度は高いが、保険料は高い
- ネットワーク内外の医療機関の受診可能
- ネットワーク外だと、自己負担が増える
- 専門医への受診は、紹介状なしで可能
POS
- HMOとPPOの中間
- 費用は、HMOとPPOの中間くらい
- ネットワーク内外の医療機関の受診可能、かかりつけ医を持つ
- ネットワーク外だと、自己負担が増える
- 専門医にかかる場合の紹介状の必要性は、プランにより異なる
うちの保険は、HMOという、ネットワーク内(in-network)の受診の場合は、「Co-pay」を支払うシステムに入っていました。
近所の総合病院が、in-networkであることを確認し、総合病院の救急外来(Emergency department)に行きました。
深夜の救急外来・受付
持ち物
⚫︎ 保険証
⚫︎ お金
⚫︎ ティッシュ
⚫︎ 水
⚫︎ Sac(胎嚢)らしきもの(私はみるのも怖かったので、袋に入れて夫に持ってもらいました)
⚫︎ メガネ
持っていくべきだが、忘れてしまったもの
⚫︎ ID(SSNの写真で対応してもらえました)
⚫︎ パッド(出血が続いているため、持っていけばよかった)
救急外来の受付
救急外来入口
看護師さんから検温(舌下)と、来院理由、身長、体重を聞かれました(日本のcm/ kgでも大丈夫)
事務手続き
名前、生年月日、住所、電話番号、保険証提示、IDの確認、緊急連絡先(夫の連絡先)を聞かれました。
同時に、看護師さんから、バイタル(血圧、脈拍数、SpO2)測定と、自傷行為の可能性があるかの質問をされました。
IDを忘れてしまいましたが、SSNなど、番号が控えられれば良いようで、原本(カードや紙)がなくても対応して頂けたのでよかったです。
全てデータ入力で、サインも全て電子でした。
診察室へ移動
待合室で数分後に、女医さんが挨拶をしてくれました。
初期対応の看護師さんのはからいで、夫も病室へ一緒に付き添いを許可してくれました。
通訳が必要か聞かれ、救急受診でも、通訳を利用することができることに驚きました (遠隔でiPadのようなもの)
しかし、深夜だったこともあるからか、日本語の通訳の方が通じず(通常はそのようなことはないらしい)、検査までは通訳なしになりました。
ただ、丁寧にゆっくり説明をしてくれたので、状況は理解でき、不安に思うこともなかったです。特に、担当看護師の方が不安に配慮してくれました。
救急外来が完全個室
日本の救急外来は、個室ではないイメージがあり、隣の人の会話が聞こえたりするのですが、完全個室だったので、他の人を気にすることもなく、プライバシーに配慮されていると感じました。
ナースコールは、テレビのリモコンも兼用になっていて、テレビのチャンネルの選択肢が大量にあり、新鮮でした。
バイタル確認・診察・検査
病歴を伝え、持ってきたもの(胎嚢らしきもの)を見てもらいました。
病歴は、私の場合は、10 weeks pregnant、bleeding for three days、lower abdominal painが言えれば大丈夫でした。
尿検査
出血が続いており、完全血尿になってしまいましたが、問題ないよと、看護師さんが言ってくれました。
採血・点滴ライン取り
計3回、刺されました(かわるがわる、一人一回までといった感じに)
緊張している私に、「日本の建築や仏教が好き」「日本に行ってみたい」「K-POPは好き?」など、リラックスさせてくれるように声がけをしてくれました。
採血はシリンジ2つ分(40cc位?)と多めでした。
エコー(Ultrasound)のため別室移動
移動は、車椅子で送ってもらいました。
検査室にあるトイレで、タオルを巻いて、着替えてくるように言われました。
検査が始まり、病歴を簡単に伝えましたが、その中で「最終月経の開始日」を聞かれましたが、その場に携帯がなく、すぐに答えらえず、このあたりと伝えました。
後で、その日付が紹介状に記載されてしまったので、後でかかった病院で訂正することになりました。
経腹&経膣エコー
出血が続いていて、タオルを汚しそうでしたが、問題ないと言われました。
思ったより、圧をかけてグリグリされましたが、一緒に画面をみて、やはり胎嚢は見えず、終了後は、出血が続いていて、どうしようと思いましたが、検査の方が、パッドを2枚くれました。
このあと、Radiologistの読影があるからとのことで、待ち時間になりました。
待ち時間(4時間くらい)
テレビをぼーっとみたり、寝ようとしてみたりしましたが、緊張のためか深夜であるにも関わらず、眠くはならず、何となく結果はわかっていながら、早く結果が聞きたいという気持ちでした。
夫は、ベッドサイドで、保険のページから、この状況でいくら費用がかかるかの目安を調べてくれていました。
待ち時間が長く、水を持ってきて、正解だと思いました。
結果説明
結果説明の時も、日本語の通訳の方は通じなかったので、英語で大丈夫だと伝えて、結果説明になりました。
わからなければゆっくり説明してくれたり、言い換えてくれたり、ジェスチャーも使ってもらえたので、理解することができました。
結果は、「I am so sorry, you had a miscarrige(流産)」と伝えられました。エコーでは、胎嚢は見えず、ただ、残りの組織があるので、フォローが必要(そのまま残っていた場合は、掻き出す処置が必要になる場合がある)とのことでした。
フォローが必要
採血フォロー
hCG 25000 と高いので、2日以内に下がっていることを確認する必要があると言われました。
エコーのフォロー
7-10日以内に、エコーのフォローが必要(残りの組織が出たかの確認)とのことでした。
そのフォロー先を、今回受診した病院にするか、元々初診を予定した病院にするかを聞かれたので、初診を予定していた病院で、フォローアップすることを選びました。
質問がないか聞かれる
「出血はいつまで続きますか?」と聞いたところ、「人によって違い、2週間〜1ヶ月続く人もいる」とのことでした。
医療従事者の配慮
緊張して説明を聞いていたのですが、心理面にも配慮してくださり、担当した女医さんが「初めての妊娠だったから、とても悲しいと思う。でも、普通はSac(胎嚢)が出てきた瞬間に卒倒してしまう人もいるから、それでも救急外来に来られたのはすごいこと」と言ってくれたり、看護師さんも優しく、寒いからと温かい毛布をかけてくれたり、「調子が悪くなったら、いつでも受診してね」と、配慮してくれました。
通訳がなくても、私の話す英語を聞き取ろうとしてくれて、意外にコミュニケーションできるものだとわかりました。
分業化している医療スタッフ
病院内での待ち時間に、不思議だと思ったのが、夜中にも関わらず、スタッフが明るく、笑い声が絶えませんでした。
シフトがかなりあるのか、入れ替わりも多い印象でした。
日本だと、救急外来で医者がしている業務(エコー、紹介状作成など)も、エコー検査の担当者がいたり、読影の担当者がいたり、紹介状も分業している印象がありました。
日本よりも、医療従事者が多いことも関係しているのかと思いました。
チェックアウト
朝の5:30頃になっておりました。HMOの保険なので、Co-payを支払うと思っていましたが、名前と住所の確認で終わりました。
今回、窓口で請求はなく、後日自宅へ郵送されるとのことで、駐車券をもらって、帰りました。
→結局、郵送はされず、保険会社のホームページで全て確認するようで、オンライン上でCo-payの支払いとなりました。
帰宅後
病院では、緊張して警戒していましたが、自宅に帰ったら安心しました。
残念でしたが、自分の身体の状態がわかり、今後どうすればいいかが分かり、漠然とした不安から解放されたような気持ちでした。
身体の変化
一方で、身体は、妊娠前の状態に戻った感じに軽くなり、腹痛も全くなくなり、出血も少なくなってきました。
その変化までの時間が短かった分、いかに、妊娠中の身体の変化が大きかったのかがわかりました。
翌日の夜に、残りの組織と思われる血液の塊が出てきてくれて、腹部の違和感も完全になくなり、出血もほぼなくなりました。
流産というと、もう流れてしまったから、病院に行かなくてもいいかとも思いましたが、子宮の中に、組織が残っている場合は、掻き出す処置が必要な場合もあり、評価が必要だそうです。また、hCGのフォローも絨毛性疾患の可能性もあるため、必要なのかと思いました。
救急外来でかかった費用
結果的に、費用はCo-payで支払った$75 (Emergency Roomの場合)でした。保険会社の個人ページで、確認していた費用の通りでした。
保険会社の個人ページ(Medical coverage参照)
Co-payは、Office visits(専門医にかかる場合、かかりつけ医にかかる場合)、Testing(採血、画像検査)、Routine Services(検診など)、Emergency Care/Urgent Care(救急医療)、Maternity/Pregnancy(妊娠・出産に関わる)、入院などについての項目があり、それぞれの場合で、Co-pay(自己負担額)の費用が記載されています。
スクリーニングなど、費用がかからないサービスもあります。
費用の詳細
実際の請求
受診後2週間ほどで、請求が来ましたが、今回の受診で保険適応前の額はかなり高額でしたが($5333)、私の保険プランでは、Co-payを支払い、Co-payを超えた分は、保険会社が負担をしてくれていました。
アメリカの医療費は高いですが、アメリカは保険の種類が多く、人により加入している保険やプランが違うので、自己負担の度合いは人により変わるので、単純に自己負担額を比較することはできないとわかりました。
結果的には、フォローが必要な状況だったので、救急外来受診をしないという選択をしなくてよかったと思いました。
予約の取り直し
翌日は日曜だったので、予約をとるにも電話が繋がらず、月曜に、初診予定だった病院へ電話で事情を説明して、予約を取り直すことになりました。
その日は、電話のやりとりに追われました。いろんな部門の人から電話が来たので、誰が誰だかわからなくなりましたが、なんとかなりました。
⚫︎ 身体状況の確認
⚫︎ 緊急時(肩の痛み、心臓痛、息切れ、めまいなど)があった場合の連絡先
⚫︎ 採血のために別施設へいく必要があること、病院受診は別に予約を取る必要があること
⚫︎ Pregnancy Loss部門の施設を、候補の中から選択
⚫︎ 予約時間、病院の住所、階数の確認
と、計6回位電話が来ました。
予約の取り直しでは、もともと予約していた「OB-GYN(産婦人科)」ではなく、「Pregnancy Loss」という部門になるとのことで、別の病院の候補を2つ出され、自宅に近い方を選びました。
採血はQuest Diagnostics
アメリカでは、検査専門機関があるようで、自宅近くで可能な施設を紹介されました。
採血オーダーは、Faxで送ったから手ぶらで行っていいと言われました(が、実際には、IDと保険証が必要でした)
日本だと、病院受診日に採血をするため、検査部門の待ち時間、結果が出るまでの待ち時間などがかかる印象でしたが、アメリカの医療システムは、施設まで分業化していて、効率的だと思いました。
採血のための施設が別にあるという発想がなかったので、「Quest Diagnostics」が聞き取れなくて、何を言っているのかわからなかったのですが、住所と、電話番号を教えてもらい、ネットで特定し、状況がやっとわかりました。
「Pregnancy Loss」部門は、その週の金曜に予約が取れました。時間、住所、建物の階数を言われ、持ってくるべきものを確認しました(ID、保険証、お金、事前オンライン登録票(COVID状況調査))
電話での英会話
電話で英語を使うのは、慣れていないので、何度も聞き返して、「〜, right?」と、しつこく確認して、最後の方は、メモを見ずに電話で答えるようになり、brokenでも度胸がついてきました。
質問があるか聞かれたので、「2日以内にフォローが必要」と聞いていたけれど、受診は金曜でいいのか?と聞いたところ、採血のために「Quest Diagnostics」に行くことが、フォローになっているとのことでした。
採血後は、結果はオンラインで共有され、私もアクセスでき、その日のうちに結果が共有されました。
その後、病院から電話がかかってきて、「hormone (hCG)」が下がってきているから、緊急で受診する必要はなく、予定通りに金曜に受診をするように言われました。
採血機関は別でも、オンラインで情報共有をして、遠隔でもフォローアップが可能だとわかりました。
日本では、病院受診(=フォローアップ)だと思っていたので、日本の医療との違いを感じました。
受診記録・検査記録はオンラインから共有
オンラインで、かかった病院の検査結果(採血、尿検査、エコーのレポート)、紹介状、サマリなどが共有されました。
医療従事者とメッセージのやりとりもできる項目があり、何か質問がある場合は、チャット利用できるとのことでした。
周囲からの助け
深夜から朝にかけて救急外来にいたので、その日から数日眠れず、食欲もない状態が続きました。
私の場合は、周囲に妊娠したことを初期の段階で相談していたので(←初めて&アメリカだったので)流産後に、同じ経験がある人が、お弁当を自宅に届けてくれたり、話をしてくれたりと、助けてもらいました。
意外に経験者がいる
周囲には、流産を経験したと言われたことはなかったので、流産後に、実は私もという話や、知り合いにも経験した人がいるけど、その後に妊娠、出産した人も沢山いるという話などを共有されました。
あまり人とは話さない話題ではあるけど、実はオープンにしていないだけで、経験している人は意外にいるんだということがわかりました。
後から、Language Exchangeのアメリカ人の友達と共有した際に、こういう話題は、アメリカ女性の間では、結構オープンで、別にタブーでもないということでした。
まとめ
以上が、アメリカで自然流産、救急外来を受診した体験談・費用についてでした。
アメリカで救急受診をする際に、気をつけたいと思ったことは、以下の通りです。
⚫︎ 緊急でかかる病院を、普段から決めておくこと
⚫︎ 受診の際は、ID、保険証を忘れないこと
「Pregnancy Loss」部門でのフォローアップの記事は、また次回の記事で書きます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。