アメリカでの子育てを控えている方から、いちばん多く届く質問が「保育園はどうなっているのか」です。
先に結論をお伝えすると、フィラデルフィアの保育制度は、日本とは仕組みが大きく違います。
自治体が入園を一括で調整する仕組みはなく、各園に直接申し込むのが基本。私費が原則で費用は高額です。
ただし、市内在住であれば、3〜4歳から利用できる無料のプレK制度「PHLpreK」があり、所得制限も就労要件もありません。
この記事では、制度の全体像と日米の違いを整理します。2026年7月に、州・市の公式情報をもとに全面更新しました。
これから移住を検討している方に向けて、妊娠・出産・子育て・キャリアと、様々なフェーズにいる方々に参考になればと思い、現地のアメリカ人友人(Pre-K、Preschoolの先生)からの一次情報も踏まえて、現地の保育事情についてまとめました。
この記事でわかること
- Kindergartenは義務教育ではない、という事実フィラデルフィアと日本の保育機関の対応関係
- フィラデルフィアの保育・教育機関4種類の違い
- 日本の保育園・幼稚園との対応関係
- 2026年時点の保育料相場
- 市内在住なら無料になる「PHLpreK」の仕組み
- Kindergartenは義務教育ではない、という事実
1. 全体像|施設は4種類に分かれる

日本では「保育園」「幼稚園」の2択ですが、アメリカでは年齢と目的で4つに分かれます。
| 種類 | 年齢 | 性格 | 日本で近いもの |
|---|---|---|---|
| Daycare | 0〜5歳 | 保育中心。就労支援が目的 | 保育園(特に0〜2歳) |
| Preschool | 3〜4歳 | 遊び+学びの幼児教育 | 幼稚園(年少〜年中) |
| Pre-K | 3〜5歳 | Kindergartenへの準備クラス | 幼稚園年長 |
| Kindergarten | 5歳〜 | K-12教育のスタート | 年長より教育色が強い、小1の前段階 |
Daycare (0〜5歳)
民間運営で、保育が中心。開所時間は園によりますが、朝から夕方までの終日型が多く、延長保育を設けている園もあります。
Preschool(3〜4歳頃)
学習、社会性、言語発達などを扱う幼児教育。半日型(午前のみ)の園もあり、費用は私費が基本。一部に公費補助があります。
イメージとしては、Daycare+Preschool=日本の保育園+幼稚園。
0〜2歳は保育所型、3〜5歳は園の方針次第で「教育中心」にも「長時間+遊び中心」にもなります。
Pre-K(3〜5歳)
Kindergartenへの準備クラス。算数の基礎、リテラシー、集団生活を学びます。終日預かりの園も多く、働く親にとっては幼保一体に近い形です。
Kindergarten(5歳〜)
満5歳になる年度から始まる、K-12(Kindergarten〜高校3年生)のスタート地点。
読み書き、算数、理科の導入が本格的に始まります。
2. Kindergartenは義務教育ではありません
意外と知られていない事実です。
ペンシルベニア州では、Kindergartenそのものは義務ではありません。
就学義務が始まるのは満6歳から。9月1日時点で6歳になった子は、その年度から就学または在宅学習の義務が生じます。
実際にはほとんどの子がKindergartenから通いますが、「義務ではない」と知っておくと、渡米タイミングを考えるときの選択肢が少し広がります。
(参照:ペンシルベニア州教育省「Admission to Kindergarten and Beginners」)
3. 日本とここが違う|入園の仕組み
| 日本の認可保育園 | フィラデルフィアのDaycare | |
|---|---|---|
| 管轄 | 市区町村 | 民間運営(州がライセンス) |
| 申込先 | 役所 | 各園に直接 |
| 選考 | 保育必要度の点数制 | 空き状況とウェイトリストの順番 |
| 就労要件 | あり | なし |
| 保育料 | 住民税・所得で決定 | 私費(園が設定) |
| 入園時期 | 4月+途中入園 | 9月+途中入園 |
いちばん大きな違いは、「自治体が調整してくれない」ことです。
日本では役所に申請し、就労状況などで点数がつき、空き状況と点数で入園が決まります。
フィラデルフィアでは各園に直接申し込み、就労の有無は問われません。
ただし、費用を負担できれば必ず入れる、というわけではありません。実際に入園できるかどうかは、その園に空きがあるか、ウェイトリストの順番が回ってくるかで決まります。特に乳児クラスは希望が集中しやすく、早めに動く家庭が多いと言われています。
学区の縛りはありません
保育園・Preschoolに学区(school district)の縛りはありません。
学区が関係するのはK-12(Kindergarten以降)からです。
乳幼児の施設は、住んでいる場所に関係なく、通える範囲+空き状況で選べます。
4. 保育料の相場(2026年)
センター型の乳児保育の相場は、複数の民間調査を合わせるとおおよそ次の通りです。
| エリア | 月額の目安 |
|---|---|
| フィラデルフィア市内 | $1,400〜2,000(平均$1,500前後) |
| 市内の質の高い園、Main Lineなど高級住宅エリア | $2,000〜2,500 |
| トドラー(幼児)クラス | 乳児より下がる傾向 |
(出典:DaycareCalc、ChildCarePath、TrustedCare/いずれも2026年の民間調査。公的統計ではありません)
日本の認可保育料と比べると、かなり高額です。
費用負担は社会問題としても指摘されており、乳児保育の費用が世帯収入の1割を超えるという民間調査もあります(米厚生省が「無理のない負担」の目安とするのは収入の7%)。
なお相場データは調査によって幅があります。実際の金額は、各園の料金表で確認するのが確実です。
5. 市内在住なら「無料のPre-K」があります
フィラデルフィア市には、PHLpreKという市独自の無料pre-K制度があります。
フィラデルフィア市に住む予定なら、この制度を知っているかどうかで保育費が大きく変わる可能性があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 市内在住の3〜4歳児(9月1日時点) |
| 所得制限 | なし |
| 就労要件 | なし |
| 費用 | 学校年度中、1日約5.5時間が無料 |
| 財源 | 加糖飲料税(通称「ソーダ税」) |
| 規模 | 2025-26年度は約5,250人分の枠を230超の拠点で運営 |
| 申込 | 2026-27年度分は2026年1月20日受付開始。空きがあれば年度途中も可 |
| 必要書類 | 子の年齢証明(出生証明書・パスポート等)+市内在住の証明 |
(出典:フィラデルフィア市公式サイト、PHLpreK公式サイト)
ポイントは3つです。
- 所得制限も就労要件もない——専業家庭でも、収入がいくらでも申し込めます
- 市内在住であることが条件——郊外にはこの制度がありません
- 無料なのは1日約5.5時間——それ以外の時間や夏休みは、園ごとの別料金です
「市内に住むか、郊外に住むか」を考えるとき、この「市内=3歳から無料プレK」は判断材料として相当大きいです。郊外では、私費のPreschoolが基本になります。
6. そのほかの公費プログラム
PHLpreK以外にも、所得や就労状況などに応じて利用できる公費プログラムがあります。
代表的なものは、州が運営するPre-K Counts、保育料補助のChild Care Works(CCW)、連邦のHead Startです。
| プログラム | 主体 | 年齢の目安 |
|---|---|---|
| PHLpreK | 市 | 3〜4歳 |
| Pre-K Counts | 州 | 3歳〜Kindergarten入学前 |
| CCW(Child Care Works) | 州 | 0〜12歳 |
| Head Start | 連邦 | 3〜5歳 |
それぞれ対象年齢、所得基準、就労要件、在留資格に関する条件が異なります。利用を検討する場合は、各プログラムの最新条件を確認してください。
具体的な申請条件や手続きは、noteの実践ガイドで整理しています。
(出典:ペンシルベニア州教育省、ペンシルベニア州DHS)
7. 保育の質と人員配置
ペンシルベニア州の職員配置基準は、乳児1:4、幼児1:10が標準です。
州にはKeystone STARSという公式の質評価システムがあり、⭐1〜⭐4で格付けされています。食の安全、保育内容、衛生、安全性、保護者との連携などが評価され、州の定期調査を受けます。園選びの最初のフィルターとして使えます。
(出典:ペンシルベニア州DHS、ペンシルベニア州教育省「Keystone STARS」)
連絡帳はアプリが主流
日本のような紙の連絡帳は一般的ではなく、写真・活動記録・健康記録を専用アプリで共有する園が多いようです。発熱時に保護者へ連絡が入るのは、日本と同じです。
まとめ|制度を知ると、住む場所の選び方が変わる
- 施設はDaycare / Preschool / Pre-K / Kindergartenの4種類
- 入園は自治体を通さず各園に直接。就労要件はないが、空き状況とウェイトリスト次第
- 乳児保育の相場は市内で月$1,400〜2,000(民間調査)
- 市内在住なら3〜4歳から無料のPHLpreK(所得・就労要件なし)
- Kindergartenは義務教育ではない(就学義務は満6歳から)
制度を知っておくと、「市内に住むか郊外に住むか」「いつ渡米するか」といった大きな判断がしやすくなります。
次に困るのは、「いつ、何をすればいいのか」です
制度が分かっても、実際に園を探し始めると、
- いつから申し込むのか
- どの園を比較するのか
- 見学では何を聞くのか
という次の問題が出てきます。
noteでは、渡米前から入園までの流れを、行動順にまとめました。園見学の質問リスト、問い合わせメールの例文、園の比較チェック表も、そのまま使える形で掲載しています。

移住のタイミングによっては、日本で出産してから現地で保活を始めるケースも、自宅保育という選択肢もあります。この記事が判断の材料になれば嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
出典(2026年7月確認)
- フィラデルフィア市「Enroll in PHLpreK」 https://www.phila.gov/services/education-learning/enroll-in-phlprek/
- PHLpreK公式サイト https://www.phlprek.org/
- ペンシルベニア州教育省「Preschool Programs(Pre-K Counts)」 https://www.pa.gov/agencies/education/programs-and-services/instruction/early-learning/preschool-programs
- ペンシルベニア州教育省「Keystone STARS」 https://www.pa.gov/agencies/education/programs-and-services/instruction/early-learning/keystone-stars
- ペンシルベニア州教育省「Admission to Kindergarten and Beginners」 https://www.pa.gov/agencies/education/resources/policies-acts-and-laws/basic-education-circulars-becs/purdons-statutes/admission-to-kindergarten-and-beginners
- ペンシルベニア州DHS「Child Care Works (CCW)」 https://www.pa.gov/agencies/dhs/resources/early-learning-child-care/child-care-works
- DaycareCalc / ChildCarePath / TrustedCare(2026年 民間調査)
※制度・金額は変更されることがあります。申請前に必ず各公式サイトで最新情報をご確認ください。
