アメリカの学会は発表だけじゃない。研究者が人脈を作るためにしていること

学会というと、研究発表をして、ポスターを貼って、講演を聞く場所というイメージがありました。

でも、研究者の夫に話を聞いていると、アメリカの学会はそれだけではないようです。

発表の外側にある、食事の席、懇親会、ちょっとした会話。むしろ、そこにこそキャリアにつながるチャンスがあるのだと知りました。

今回は、ポスドクである夫に聞いた「アメリカの学会で研究者がどう人脈を作っているのか」をまとめます。

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目次

1|学会は発表の場であり、人脈づくりの場でもある

学会の目的はふたつある

研究者にとって、学会の目的はふたつあると夫は言います。ひとつは「コラボレーションのきっかけをつくること」、もうひとつは「人脈を広げること」。

発表はもちろん大事。でも発表が終わったあとの時間、食事の席、懇親会——そういう「すき間」こそが、人と繋がれるゴールデンタイムだというんです。

アメリカの学会は小規模で距離が近い

夫が参加してきた分野では、アメリカの学会は比較的小規模で、参加者同士の距離が近いものも多いようです。ランチが用意されていて、みんなで同じテーブルを囲むスタイルのことも多く、「食事の席」がそのまま交流の場になるそうです。

日本の学会は医局・研究室ごとにかたまることが多く、食事会のような場が設けられることは少ない。アメリカのこういうスタイルが、人脈づくりにとって大きな違いになっているようです。

2|PIと一緒に行くと、紹介してもらえる

PIが橋渡しをしてくれる

まず知っておきたいのが、「PI(ラボを主宰している研究者)と一緒に参加できるかどうか」で、学会の過ごし方がかなり変わるということ。

PIは、自分のラボのメンバーを他のPIに積極的に紹介してくれます。「うちのポスドクで、こういう研究をしています」と一言添えてもらうだけで、相手PIとの会話がスムーズに始まるんです。自分一人では到底入り込めないような輪に、PIの存在が橋渡しをしてくれる。

PIはPI同士でかたまる

学会では、PIはPI同士でかたまって話すことが多い。食事のテーブルもいつの間にかPI席になっていたりする。そこへ一人で割り込むのは難しいけれど、自分のPIと一緒にいれば、自然にそのテーブルに座ることができる。「PIと一緒に行けるなら、なるべくついていく」というのが、夫の基本スタンスです。

3|一人で行く場合は、食事の席が勝負になる

「PIはPIを呼ぶ」という法則

PIが参加しない学会に一人で行く場合は、「食事の席に全力をかける」のだと夫は言います。少し笑えるような、でもリアルな戦略を教えてくれました。

ランチはビュッフェスタイルで、参加者が自由にテーブルを選んで座ることが多い。そこで夫がやっていたのは、「新しいテーブルにPIが1〜2人座ったタイミングで、そこに座る」こと。

PIはPIを呼ぶ。最初に1〜2人が座ると、知り合いのPIがそこへ集まってくる。結果として、自分は自然な流れでPI席に加わることができる、というわけです。「正当な理由を持って、PIのそばに座れる」というのがポイントで、無理に割り込む必要がない。

食事の時間はもう「仕事の場」

「食事はもう仕事の場。一番大事な時間」と夫は言い切っていました。休みたければ、興味のない発表の時間にプールに行けばいい、と(笑)。

PIとゆっくり話せるタイミングは、食事の時間くらいしかない。ポスター会場にはPIが来ないこともある。だからこそ、その時間をどう使うかが、学会の成否を分けるのだそうです。

4|PIと話す前に、相手の研究を調べておく

「何も知らないで行くのは失礼」

「何も知らないで行くのは失礼」というのが夫の考えです。

学会に参加する前に、その分野の主要なPIが誰かを把握しておく。その人がどんな研究をしているか、最近どんな論文を出しているかをざっと調べてから臨む。そうすることで、「あなたの最近の研究、こういうアプローチが面白いと思って」という具体的な話ができる。

発表を聞いて質問をつくっておく

もし事前に調べ切れなかったとしても、学会の発表を聞いている最中に自分なりの質問をメモしておいて、食事の席でそれを話題にするのも有効だそうです。「あなたのポスターを見ました」「発表を聞いて気になったことがあって」という入り口があれば、会話が始まりやすい。

PIのラボのポスドクや学生がポスター発表をしていることも多いので、そこで研究内容を把握して、後でPIと話す糸口にする、という使い方もできるそうです。

名刺より「自分が何者か」を伝える

ちなみに少なくとも夫の分野では、名刺交換はあまり重視されていないようです。連絡先はあとで調べればわかるからと、その場でやりとりすることは少ないそうです。それよりも、「自分が何者か」を伝えること——どのラボにいて、今どんな研究をしていて、今後PIポジションを目指しているということを、さらっと話せるように準備しておくことの方が大切だと言っていました。

5|研究者のキャリアは、論文だけでなく人との繋がりも大きい

ポスドクになって気づいたこと

夫がここまで戦略的に人脈を意識するようになったのは、ポスドクになってからだといいます。大学院生のころはそこまで考えていなかった。でも、ポスドクとして働く中で、「人と繋がることがいかに大事か」を実感してきたと。

PIに「知ってもらっている」ことが武器になる

PIを目指す研究者にとって、論文の実績はもちろん必要です。でも、PIポジションに採用されるかどうかは、「誰がその人を知っているか」にも左右されます。ラボを移るときも、コラボレーションを組むときも、「知ってもらっている」ことが大きな武器になる。

同じポスドク同士の繋がりも大事です。今は横並びでも、そのうちの何人かはいずれPIになっていく。若いうちから築いた関係は、長い目で見て財産になる、と夫は話していました。

帯同家族として感じること

家族としてこういう話を聞いていると、夫が学会から帰ってきたときの「疲れたけど、いろんな人と話せた」という表情の意味が、少しわかるような気がします。発表の緊張より、食事の席での会話の方に、もしかしたらエネルギーを使っているのかもしれない。

まとめ:学会の「外側」にこそ、チャンスがある

今回の話をまとめると、こんな感じです。

・PIと一緒に行けるなら、積極的についていく。紹介してもらえるチャンスを活かす。

・一人で参加する場合は、食事の席に全力を注ぐ。PIが座ったテーブルに早めに合流するのがコツ。

・事前に相手の研究を調べ、話せる内容を用意しておく。

・自分が何者かを伝えられるように準備しておく。

研究者のキャリアを外側から見ていると、論文や実験の話ばかりが目に入りがちです。でも実は、こういう「人と繋がる努力」が、キャリアを支える大きな柱になっているんだな、と改めて思いました。

次回も、研究と暮らしの間にあるリアルな話をお届けできればと思います。

Podcastでも話しています

この内容は、Podcastでも夫婦で話しています。文章ではまとめきれない会話の雰囲気や、夫の言葉そのままのニュアンスもあるので、よければあわせて聞いてみてください。

Substackでは追加の深掘りを配信します

今回の記事では、アメリカの学会で研究者がどう人脈を作っているのかをまとめました。

Substackでは、Podcast Ep18の内容をもとに「海外学会前に見返したい、PIに話しかけるための実践ノート」を作っています。

話しておきたいPIの確認、ポスターの見方、英語での最初のひとこと、自分の研究を30秒で説明する準備などを、学会前に見返せる形でまとめました。

海外学会を控えている方や、研究者の学会準備をもう少し具体的に知りたい方は、よければこちらも読んでみてください。

フィラデルフィアエリアで情報交換できる場を探している方へ

フィラデルフィアエリアには、日本人向けの勉強会コミュニティがあります。以前から続いている会で、現在は夫も運営に関わっています。

現地で研究や仕事をしている方をゲストにお呼びして、研究、キャリア、仕事について話を聞いたり、懇親会で交流したりする会です。基礎研究者の方が多いようですが、医師、企業勤務の方、駐在の方、帯同家族の方など、フィラデルフィアエリアに関わる方なら幅広く参加しやすいと思います。

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