久しぶりの「Lab & Life」収録
夏の間、研究者の太巻きさんはボスの研究費の申請書に追われ、シロックマはというと、左膝が腫れてしまい、整形外科とリハ通いの日々。
そんな近況を語り合いながら、今回のテーマはゆるくも深いー
「赤ちゃんのほっぺって、なんであんなにぷにぷになの?」というお話です。
ほっぺの正体は「Buccal fat pad」
ぷくぷくの中身は脂肪のかたまり

赤ちゃんのほっぺの中には、Buccal fat pad(バッカル・ファット・パッド)と呼ばれる脂肪のかたまりが入っています。
これは、「咬筋(噛む筋肉)」の間にあり、赤ちゃんのほっぺのボリュームを作っている部分です。
熱をつくる特別な脂肪

生まれたばかりの赤ちゃんのほっぺは、実は褐色脂肪(brown adipose tissue)でできています。
ミトコンドリアが多く、血流が豊かで、ほんのり赤褐色をしているのが特徴。
寒さに弱い赤ちゃんが体温を保つため、この褐色脂肪が熱を生む役割をしているんです。
白色脂肪への変化:エネルギー貯金とクッションの役割

生後1ヶ月頃から、ほっぺの脂肪は白色脂肪(white adipose tissue)に変化。
熱を生むよりも、エネルギーを貯める・衝撃を吸収する働きにシフトしていきます。
つまり、あのぷにぷにしたほっぺは、「成長へのエネルギー貯金」であり、「顔を守るクッション」でもあるのです。
ぷくぷく期のピークは6ヶ月〜1歳

赤ちゃんの体重がぐんぐん増えるこの時期。
バッカルファットが膨らみ、いわゆる「ぷくぷくピーク」を迎えます。
2歳頃になると、咬筋や口輪筋が発達し、脂肪の割合が減少し、離乳食でよく噛むようになり、顔の輪郭が少しずつ引き締まっていきます。
まるまるモチモチから、小さな人間へ。
成長の変化を感じる嬉しさと、少しの切なさが入り混じる時期ですね。
再生医療でも注目される「ほっぺの脂肪」
幹細胞が豊富なバッカルファット
驚くことに、バッカルファットには、間葉系幹細胞が豊富に含まれています。
これは、骨や血管など様々な細胞に分化できる細胞で、歯科や形成外科の再生医療分野でも研究が進んでいるそう。
口の中からの小さな切開で採取でき、成人でも局所麻酔で10分程度で行える安全な方法とのこと。
まさに、かわいさの裏に未来の医療の可能性が隠れています。
ほっぺの進化に感謝して
新生児期のほっぺは「熱をつくる装置」、1歳では「ぷにぷにクッション」、そし将来は「再生医療の素材」にもなり得る。
今日も我が家の細巻きちゃん(2歳10ヶ月)のほっぺを、ありがたく愛でながら過ごしたいと思います。
赤ちゃんのほっぺ、かわいいだけじゃない。
そこには、生命の知恵と進化の物語が詰まっていました。
